飢えとヒエラルキー④~ヒエラルキーの作り方~
今回はヒエラルキー構造を人為的に作り出すには、というテーマになります。
私の考えた方法ですが、おそらく一般的にも同様の方法がとられていると思われます。
誰かが意識してかそれとも無意識的にかはわかりませんが、簡単に作れます。
だからこそ世の中にはありとあらゆる階級ができあがるのではないでしょうか。
男女別の身長や、体重、大規模な模試の結果などを分布図にしてみると
平均値付近が一番高く、平均から離れるにしたがって緩やかに低くなっていくものを見たことはないでしょうか。左右対称で、釣り鐘型の分布図です。
例えば日本人成人男性の身長の分布図は170cm付近を頂点とした釣り鐘型になります。
この170cmは日本人男性の平均身長でもあり、よくみられる身長ということにもなります。
このような左右対称な釣り鐘型の分布図の代表的なものを「正規分布」(ガウス分布)といいます。
正規分布は英語で Normal distribution と言うことからも分かるように『この世でもっとも一般的な分布』であり、「誤差の大きさの出現確率」をはじめ、さまざまな社会現象や自然現象に当てはまる確率分布です。
アタリマエ!
「正規分布とは何なのか?その基本的な性質と理解するコツ」より引用
このように社会や自然を統計的に見てみるとよくある一般的な分布になります。
統計学的に厳密に定義するなら、「平均値と中央値と最頻値が同一である分布図」となりますが、ヒエラルキー構造を作る場合そこまで厳密でなくてもできます。
正規分布に近いほどヒエラルキー構造は出来やすいと思っていて間違いないでしょう。
少数優位の法則
自然な分布が、なぜ正規分布のようなかたちになるかというと、証明されているわけではありませんが、
わたしは「ちょうどよい値」がある場合、その値を中央とした分布になるのではないかと考えています。
たとえば先ほどの身長でいえば、中央値に来る身長が、もっとも今の社会環境で生きていくうえで無理がない身長であるともいえるのではないでしょうか。
だからといって、低いのは良くない、高いのは良くないというわけではなくて、低い人にはデメリットもあるけどその分のメリットもある、同様に高い人にもデメリットはあるけどその分メリットがある程度のことであると思います。
低ければ狭い場所での細かい作業に有利ですし、高ければその逆もあるかもしれません。
そのどちらも異常というわけではなくて、分布の中に納まるようであれば正常なわけです。
中央値とは最もメリットデメリットともに無い、つまり無理がないとだけ言えるわけです。
そしてそれは環境の変化によって変化していくことも忘れてはいけません。
ちょうどよいはその時、その場所で変わっていくからです。
さて、しかしながら、ヒエラルキー構造はそれを許しません。
ヒエラルキー構造の絶対的な法則、それは少数優位の法則です。
さきほどの分布図で中央値はもっとも人数が多くなります。
したがってこの範囲にあてはまる人はヒエラルキー上位にはなれないのです。
では、どのようにヒエラルキー構造はできあがるのか
具体的な例を元に見ていきましょう。
数学テストのヒエラルキー
3年B組で数学のテストを行いました。
下表はそのときの点数と人数の関係を示しています。
この表を棒グラフにするとこうなります。
なんとなく60点付近を中央値とした正規分布をしているように思えます。
ここは厳密でなくてかまいません。
よし、まぁいいでしょう。(笑)
ヒエラルキー構造は少数優位です。このグラフにおける少数とは、もうお分かりだとは思いますが、高得点者です。90点、100点付近の人にしましょう。
0点から20点付近の人も少数者ではないかという声が聞こえてきますが、難易度として考えた場合、高得点と低得点、どちらがとるのが難しいでしょうか。
また、ヒエラルキーは多くの人が同じ足りないものを目指したときできます。
生徒たちが足りないと感じ、欲しているものは点数です。
このことからもヒエラルキー上位は高得点者になります。
では、ヒエラルキーをつくるため、まず最低ラインを決めます。
お見苦しい絵で申し訳ありませんが、上の図のように、適当な部分で区切ります。
どこでも構いませんが、ここが最低合格ラインです。
ここより下はヒエラルキー構造にすら入ることができないようにします。
入れても構いませんが、彼らはヒエラルキー構造の維持のためにはむしろ脅威になります。もし、「数学のテストになんか意味がねえよ!」と周りを巻き込んで革命を起こされたら困ります。
だから切り捨ててまともな扱いをしないようにするのです。
むしろ迫害したほうが治安は保たれるかもしれません。
さて、ここまできたら後は簡単です。
このグラフを上位者が頂点になるように90度傾けます。
すると、なんということでしょう!
ピラミッド型のヒエラルキー構造ができているではありませんか!
このように
正規分布に近い分布・少数優位の法則・下限に満たない層の切り捨て
上の条件を満たせばヒエラルキー構造が出来上がります。
この場合、得点を取る秘密を知っている高得点者が支配者層
(あるいはテストの出題者が支配者層でしょうか)
平均点以上が維持層
平均付近とそれ以下がマス層といったところでしょうか。
「ちょうどよい」と「あればあるほどよい」
本来、正規分布はちょうどよい値付近に中央値がくるようにできるというのが私の考えです。
かといって中央値に近いから優れているとか良いとかではなく、ただ、その時、その環境でちょうどよいわけです。
ちょうどよさは頻繁に変わります。
飲む薬の量や、食べる量、運動量、生活に必要なお金、これらのちょうどよさは人によって千差万別です。どのくらいが適切だ、なんて基準は本来はないのではないでしょうか。
時代や環境でちょうどよさは即時的に変わりますから、正解なんてあってないようなものです。
反対に次の時代に適したものは今の「ちょうどよくない」層から発生するわけです。
ですから「おまえはちょうど良くない」と悪であるかのように扱うことがちょうどよくない考え、偏った考えになります。
つまり、「ちょうどよさ」とは、多様性を受け入れるとも言い換えることができます。
ヒエラルキー構造の価値観は「~であればあるほど良い」
というものです。
テストであれば「点数が高ければ高いほど良い」となります。
ヒエラルキー構造は一方向的です。
高い人間が正義であれば、低い人間は悪になります。
たしかに一方向的であればまとまりやすいんです。
全体共有ができる。
そして安定しています。
しかし、何時までたっても満たされない安定なんです。
つまりちょうどよくない。
ちょうどよくないものを目指すために、常に無理を強いられるのがこの構造です。
わたしはこれを「飢えた価値観」と呼びたいと思います。
まとめ
以上がヒエラルキー構造のつくりかたです。
次回以降またお話ししますが、コマーシャリズムは意図的にこういった構造をつくろうとしています。
そのほうがお金になるからです。
みんなが同じものを欲し、ヒエラルキー構造ができあがると、そこに価値が生まれます。
テストであれば高得点者は「価値がある」とされるわけです。
コマーシャリズムはこの価値観を作り出し儲けを得ようとします。
現代社会はこの「~であればあるほど良い」という価値観にとらわれすぎてはいないでしょうか。
それは飢えた価値観です。
年収は高ければ高いほうが良い。
偏差値は高ければ高いほうが良い。
女性の体重は低ければ低いほうが良い。
反対にバストは大きければ大きいほど良い。
タワーマンションの階数は高ければ高いほうが良い。
努力はすればするほど良い。
先ほど例に出した身長も「高いほうがいい」といわれていますね。
でも本当にそうでしょうか。
私たちはこういった無理のある価値観に洗脳されてはいないでしょうか。
本来はちょうどよさがあるだけなんです。
「~であればあるほどよい」というのは、不自然な飢えた価値観ではないでしょうか。
ただ、最近はその傾向も変化してきています。
多くの人が、この無理強いさせられる価値観に疲労困憊し、失望させられたからだと思います。
わたしは「ちょうどよい」価値観をもってほしいと考えています。
そして本来自然はちょうどよいんです。
人間も本来の自分を認めさらけ出せればちょうどよいんです。
無理がありません。
ヒエラルキー的にはダメでも自分は自分にとって「ちょうどよい」と思える存在であるべきです。
ちょうどよさは即時的で、すぐに変化します。
だからこそ固定概念や常識では対応できない部分もあると思います。
しかし、自然を意識すればちょうどよさは心が教えてくれるような気もしています。
心こそちょうどよさを知るセンサーの役割を果たしているのではないでしょうか。
今日もありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。