飢えない価値観

不透明な社会の中で「飢えない生き方」を模索する雑記ブログ

飢えとは何か③~飢えは増殖を生む~

飢えとは慢性的な欠乏感であり、もしくは、その欠乏感を満たそうと恐怖に取りつかれた状態であると、当ブログでは定義しました。(飢えとはなにか①)

そして、この飢えが人間の成長を促し、文明を発展させたと書きました。(飢えとはなにか②)

 

今回は飢えが増殖を生み出すということについてお話ししたいと思います。

 

人口爆発

 

通常、豊かな状態になると人口増加が起きると考えてしまいますが、人口の爆発的な増加は貧困地域で発生します。

実際に、人口爆発が起きている国は、インド、東南アジア諸国、アフリカの一部地域など、発展途上国と呼ばれる地域です。

 

では貧しさが人口爆発の原因かというとそれは違うと私は思います。

例えば、日本の人口は江戸時代までは3000万人ほどで安定していました。

それがこの150年余りで4倍にも増加しました。

江戸時代と比べ、明治、大正と時代が進むにつれて日本は貧しくなっていったのでしょうか。

物質的にはむしろ、豊かになっていったはずです。

貧しい=人口増加と直結しないということです。

 

物質的には貧しかった江戸時代になぜ人口が安定していたか、

答えは飢えにあると思います。

飢えとは慢性的な欠乏感です。

物質的には豊かではなかったけれど、江戸時代は自給自足の生活が行われており、外国の脅威とも縁遠かったですから、精神的な欠乏感は明治時代より小さかったのではないでしょうか。

自給自足をしている社会では、人口は安定します。
食料の生産・供給量以上に人口は増加しないからです。。

しかし、江戸後期、日本は開国を迫られます。

そして250年にわたる徳川政権が終焉し、明治政府が誕生します。

明治政府は諸外国の脅威に対抗するため、富国強兵のもとに生産性を高めるための政策を次々と実行していきます。

官製工場が次々と建てられました。

富岡製糸場などが有名ですね。

この当時の日本人の中にあったのは

「もっと労働力が必要だ。もっと物資が必要だ。外国に負けない軍事力が必要だ。」

という欠乏感であったと思います。

それは慢性的な不安と恐怖であり、精神的な飢えそのものです。

それを補おうと、より多くの労働力が必要になり、

労働力である人が必要になりました。 

実際、日本の人口は19世紀後半から急激に増加しています。

貧しさそのものではなく「飢え」が人口増加を生みます。

 

先ほど挙げた発展途上の国々でも同様です。

発展途上とは聞こえはいいですが、要するにまだ足りないものが多い、と言い換えることができます。

足りていないとは、先進国と比べてということです。

先進国との交流が始まった途端人口爆発が起きました。

先進国と比べた時、自分の国は足りないものが多い。

この欠乏感が飢えを生み、人口増加を生みました。

 

 

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飢え+死の否定が増殖を生む

 

 では、飢えがすぐ増殖に直結するのかというと、これもまだ正確ではありません。

増殖を生むもう一つの要素、それは死の否定です。

先ほどの人口爆発が起きた地域は、同時に死亡率も低くなります。

これは、先進国との交流の中で、ワクチンや薬が普及したり、医療が発達したり衛生面が改善されたためです。

飢えた人々が次々と死んでいく、という末期状態では増殖は発生しないのです。

死亡率の低下と欠乏状態が増殖を生み出します。

 

人口増加の話とは無関係ですが、原理的に近いものにがん細胞があります。

がん細胞とは、本来なら代謝の中で死滅していくべき細胞が、死なないどころか増殖し、ものによっては別の場所に転移、増殖していったものです。

死滅しないように、健全な他の細胞から養分を奪ってまで生き続けようとします。

こうしてがん細胞に蝕まれた身体は、みるみるやせ細っていきます。

がん細胞も健全な細胞から養分を奪っていくことからみても、慢性的な欠乏状態=飢えの状態といっていいと思います。

そしてそれに加え、死滅しないことが、がん細胞の増殖を生むのです。

 

他にも欠乏感と死の否定の要素を持ったものに貨幣があります。

もちろん貨幣も利子と信用創造で増殖します。

また貨幣は、インフレによって価値が下がっていくことはあっても、死滅はしません。

貨幣制度は、飢えと死の否定による増殖により、成長を促し続けるシステムです。

この話はいずれ詳しくしたいと考えています。

 

 

 蝗害(こうがい)

 

 

蝗害(こうがい)というものはご存じでしょうか。

バッタのなかで、相変異をおこす種類のバッタが、大量発生することによっておこる災害です。

大量発生したバッタは移動しながら、農作物を食い荒らします。

現在では殺虫剤の普及によって発生はなくなりましたが、かつては世界中で食糧不足や飢饉をもたらすものとして恐れられてきました。

 

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相変異とはなにかというと環境によって子孫の性質が変わる性質をもっているということです。

蝗害を引き起こすバッタの場合、相変異が起きると、羽が長くなって飛びやすくなり、普段は食べないような草まで食べるようになります。

 

この相変異のきっかけですが、

大雨などが降り、草が枯れにくくなり、バッタにとって死ににくい環境が整った時に起こります。

普段なら死滅してしまうはずのバッタが繁殖を繰り返した結果、繁殖力の高いバッタが大量発生します。

このとき個体同士の距離が触れ合うほど近くなったとき変異が始まるようです。

 

ここにも増殖の要素が見られます。

まず、バッタは繁殖力が高く変異によってあらゆる種類の草を食べるようになるほど飢えています。

それほど厳しい環境に普段は置かれていると言い換えることもできます。

そしていつもなら死滅してしまうものが大雨などの影響で死ななかった場合大量発生します。

飢えと死の否定が増殖を生み出す一例であると思います。

 

 

まとめ

 

飢えが増殖を生み出すということを考察しました。

正確には欠乏と死の否定がですが、死の否定とは飢えた生き物のとる純粋な行動のように思います。

蟲毒も、飢えた蟲が死なないようにと他の蟲を食べることで完成します。

蟲の中の毒性も増殖していると、昔の人は考えたのかもしれません。

飢えによる増殖は、指数関数曲線に近似するかたちで増えていきます。

急激にグラフのデータが増加傾向にあるという場合、指数関数的に伸びていたら

今回のような飢え+死の否定の要素があるものとして考えると、面白いと思います。

貨幣制度も増殖を取り入れていると書きましたが、

今回の内容を頭に入れたうえで経済について考えると、理解が深まりやすくなると私は考えています。

 

限られた空間での増殖は爆発を生みます。

爆発したものの末路は、破滅です。

あるいは爆発しなくても、増殖が無限に続くということは、自然ではありえません。

自然は有限ですから、その許容量を超えた時点で崩壊が始まります。

空気を含んで、大きくなった泡が破裂するかのようにです。

飢えは最終的に破滅を促します。

飢えたバッタも、農作物を食い尽くした後、もう食べるものがなくなると死滅します。

飢えた人間によるねずみ講商法は、無限増幅するように思えますが、そのうち必ず崩壊します。

自然のネズミは簡単に死にますが、欲に飢えた人間は、つかんだ利益を離さず、死のうとはしません。死なないため増殖していきます。

しかし、人間の生み出す富は有限ですから、いつかは必ず破滅するんです。

 

増殖とは、破滅の第一歩と考えてよいと思います。

私たちは、増殖と成長をはき違えないようにしなければなりません。

成長はいつか成熟に変わり、次のための種を残すものです。

しかし増殖は、その種すら食い尽くし、後には何も残りません。

増殖は、飢えの持つ恐ろしい一面であるといえます。

 

 

本日もありがとうございました。